猿の惑星:聖戦記(グレートウォー)(2017米)ネタバレ感想

猿の惑星 聖戦記
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

「猿の惑星」シリーズ、シーザー三部作の完結編、『猿の惑星:聖戦記(グレートウォー)』を新宿TOHOシネマズでIMAX:3D鑑賞してきました。

「猿の惑星」シリーズは「創世記」「新世紀」と観てきていて、今回も楽しみにしていましたよ。

ネタバレのあらすじと感想をあれこれ書いておきます。

映画データと予告編動画

2017年/アメリカ  上映時間:140分
原題:War for the Planet of the Apes
配給:20世紀フォックス映画
監督:マット・リーヴス
脚本:マーク・ボンバック、マット・リーヴス
製作:ピーター・チャーニン、ディラン・クラーク、リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
製作総指揮:メアリー・マクラグレン、ジェンノ・トッピング、マーク・ボンバック
キャラクタークリエイト:リック・ジャッファ、アマンダ・シルバー
撮影:マイケル・セレシン
美術:ジェームズ・チンランド
衣装:メリッサ・ブルーニング
編集:ウィリアム・ホイ、スタン・サルファス
音楽:マイケル・ジアッキノ
VFX監修:ダン・レモン
シニアVFX監修:ジョー・レッテリ

<キャスト>
アンディ・サーキス:シーザー
ウッディ・ハレルソン:大佐
スティーブ・ザーン:バッド・エイプ
カリン・コノバル:モーリス
アミア・ミラー:ノヴァ
テリー・ノタリー:ロケット
タイ・オルソン:レッド・ドンキー
マイケル・アダムスウェイト:ルカ
トビー・ケベル:コバ
ガブリエル・チャバリア:プリーチャー
ジュディ・グリア:コーネリア

予告編

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『猿の惑星:聖戦記(グレートウォー)』のパンフレット情報

30ページ 価格:720円(税込み)
コラム執筆者:鷲巣義明(映画文筆家)、大口孝之(映像クリエーター/ジャーナリスト)
可もなく不可もない出来。買っても損はないと思います。

あらすじ(ネタバレあり)

前作『猿の惑星 新世紀(ライジング)』から2年後の世界。シーザー(アンディ・サーキス)率いる猿たちは山の中に身を潜め、滝の裏に築いた砦で生活をしていた。

ある日、人間の奇襲を受けるが、シーザー等は敵兵のプリーチャー(ガブリエル・チャバリア)等数名を捕らえる。しかし、彼らを捕虜にすることなく、彼らを人間の元へ返す決断をする。積極的には戦う意志がないことを示すためだった。

しかし、これが仇となる。人間の軍隊を統率する冷酷なリーダー、大佐(ウッディ・ハレルソン)に攻め込まれ、シーザーの妻・コーネリア息子・ブルーアイズは殺されてしまう。まだ幼い息子・コーネリアスだけは隠れていたため無事だった。

怒り狂ったシーザーは、仲間たちを隠れ家へと向かわせ、自分は一人で復讐の旅に出ることを決意する。そこへ「シーザーを一人では行かせられない」と、片腕であるロケット(テリー・ノタリー)、モーリス(カリン・コノバル)、ルカ(マイケル・アダムスウェイト)が同行することになる。馬に跨った一行は、大佐のアジトを目指して海岸線をひた走る。

旅の途中、シーザーたちは、口のきけない少女(アミア・ミラー)と出会う。少女の父親を殺してしまったため、放っておけば少女は生きてはいけない。優しいモーリスは少女に同情し、連れていくことを主張する。最初は反対したシーザーだったが、しぶしぶ了承する。

大佐の部隊のキャンプを見つけ忍び込んだシーザーは、猿を裏切って人間側に寝返った白毛のゴリラ、ウィンターを誤って殺してしまう。前作でコバ(トビー・ケベル)を殺してしまったことに続いて「猿は猿を殺さない」という掟を破る結果となってしまったシーザーは、罪の意識に苦しむ。

大佐の追跡を再開したシーザーたちは、部隊に処刑された人間の兵士を見つける。まだ息のあったその人間は、少女と同じく口のきけない状態になっていた。人間に退化の兆候が表れはじめていたのだ。

途中、動物園出身のひょうきんな猿、バッド・エイプ(スティーブ・ザーン)と出会い仲間になる。小回りのきくバッド・エイプに大佐のいる場所へ案内してもらうことになる。

ついに一行は大佐のいる巨大な要塞にたどり着くが、シーザーの置いてきた仲間の猿たちは皆、この要塞に捕らわれの身となっていた。彼らは隠れ家へ向かう途中に大佐の部隊に見つかってしまったのだ。そして水や食料も与えられることもなく強制労働につかされていた。

要塞の様子を伺っている中で、巡回中の敵兵にルカが殺されてしまう。怒りに囚われたシーザーに対してモーリスは、「今のあなたは、復讐に囚われたコバにそっくりだ」と非難する。

冷静でいられなくなったシーザーは単身で要塞に接近し、大佐に捕らえられてしまう。大佐と対峙したシーザーは、大佐がウィルスに感染した人間たちを自ら殺す立場をとったことで、本体の部隊とは孤立した存在であることを知る。なんと大佐はウィルスに感染した自分の息子までも殺していた。そして、大佐は軍の本体からの襲撃に備えて、猿たちを使って要塞の砦を築かせていたのだ。

シーザーは牢に捕らわれ、十字架に磔にされ、見せしめのため鞭を打たれる。多くの仲間たちを人質に取られているも同然のシーザーはどうすることもできなかった。しかし、仲間の猿たちのジェスチャー「エイプ、力合わせる、強い」というメッセージに鼓舞され、シーザーは力を取り戻す。

モーリスたちは、双眼鏡で要塞の様子を探り、猿たちを脱出させるための計画を練る。そして、地下道が基地の真下に通じていることを発見する。捕らわれたシーザーに同情した少女は、シーザーの牢屋に近づき、水と食料を与える。そして、自分が持っていた人形(少女の血痕付き)を渡す。見回りの兵に見つかりそうになった少女を助けるために、ロケットは囮となり、捕まってしまう。

少女は、手話で「自分も猿なの?」とモーリスに尋ねる。モーリスは、少女の持っていた飾りに書いてあった文字を読み「君はノヴァだ」と名前を与える。

モーリスとバッド・エイプは、シーザーたちと手話でやり取りをし、夜がふけたのを見計らい、脱出の計画を実行にうつす。大人の猿の檻と子供の猿の檻は別々にされていたため、子供たちの檻の鍵を見張り兵から奪い取り、子供たちを大人猿の檻に移動させることに成功する。

大人猿の檻の地面に空いた穴から地下道を抜け、次々を脱出させていく。最後に残ったシーザーは、一人で大佐の元へ復讐へ向かう。そこへ、軍の本体によるミサイルが撃ち込まれ、要塞は炎上する。

軍の襲撃により戦いがはじまった要塞の中、大佐の部屋へ忍び込んだシーザーは、ベッドに横たわる大佐を見つけ銃を構えて近づく。しかし、彼は口がきけなくなっていた。少女の持っていた人形を拾った大佐は、ウィルスに侵されていたのだ。シーザーは、悲しい目で大佐を見つめる。大佐はシーザーから受け取った銃で自ら命を絶つのだった。

猿たちが脱走したことに気づいた軍隊は、猿たちを銃撃する。それを見たシーザーは、手榴弾で基地の中にあったガソリンタンクを爆発させようとするが、プリーチャー等に見つかってしまう。間一髪というその時、その様子を見ていた裏切って人間側についていたゴリラ、レッドがシーザーを助けて、人間たちに殺されてしまう。

レッドに救われたシーザーは、手榴弾をガソリンタンクに投げ込み、爆発させる。これが基地全体に広がっていき、次々と爆発が起こる。そして、それを引き金に雪崩が引き起こされ、要塞は雪に飲まれていった。人間たちも雪崩に飲まれる中、猿たちは木によじ登ることで、全員が助かる。

猿たちは”約束の地”へと向かう。

到着した”約束の地”で、シーザーが銃に打たれた傷のため無理をしていたことをモーリスは知る。シーザーは遺言として、息子・コーネリアスをブルーアイズの妻・レイクに任せてくれと、モーリスに伝える。

モーリスは、「彼らはシーザーが仲間のためにしてくれたことを永遠に伝えていくだろう」とシーザーに言う。シーザーは安堵し、静かに目を閉じた。シーザーは神話となったのだ。

点数と評価

76点
・パフォーマンス・キャプチャーの最先端の演技が堪能できる。
・シリーズを観てきたなら観るしかない。そして伝説へ。

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感想とあれこれ

今回IMAX3Dで観たんですが、冒頭の人間が猿の砦を襲撃するシーンは、3Dの効果がバッチリ出ていて、かなり見ごたえがありました。この冒頭のシーンと、ラストの戦闘シーンは3Dで観る価値がありました。逆に、中盤は3Dを意識する映像はほとんどなかった印象です。

前作に引き続き、シーザーが「クリント・イーストウッド感ハンパねぇ」です。シーザー役を演じるアンディ・サーキスのパフォーマンス・キャプチャーによる演技の精度は、本当にすごくて、もはやCGのレベルを超えています。前作ですでに、パフォーマンス・キャプチャーで俳優の演技を堪能できる作品が作れることを証明しましたが、今作で「極まれり」という感じ。

ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(2009年)のために開発されたパフォーマンス・キャプチャーのシステムは、ここまで進化を遂げました。CG生物の動きを人間の演技と同レベルで観れるというだけでも、このシリーズは存在意義がありましたね。

今作では、シーザーの(人間的な)葛藤がこれまで以上にクローズアップして語られています。前作で「エイプ殺し」という原罪を背負ったシーザーが、それでも家族、そして仲間を守るために葛藤しながらも戦い抜きます。

1作目、2作目を観ているときは、シーザーに感情移入させられて、「猿応援スタンス」で観ていたのですが、本作では、退化していく人類を観て、圧倒的な絶望感を感じてしまいました。最初、口のきけない少女ノヴァが出てきたときは、「ああ、この子口きけないんだ、かわいそうに(´Д`υ) 」って思った程度だったんですが、軍に処刑された兵士がウィルスが発症し、口がきけなくなっているのを目の当たりにして、それが「人間の退化の兆候」だと分かる瞬間は本当にショックでした。

ただ、「聖戦記(グレート・ウォー)」っていうから、てっきり「猿VS人間」の真っ向からの大衝突になるのかと思ってましたが、全然違いました。しいて言うなら、「脱獄もの」は第1作(創世記ジェネシス)でもう見たから、今回はもっと見たことがないような”戦い”が観たかったですね。あれだけ賢くなったはずの猿たちがあっさり収容所に入れられるのも「今さら感」がしてしまいました。

あと、もう一歩乗り切れなかったのは、今作では「退化していく人間」がショックすぎて、猿側にあまり感情移入できず、どうしても人間目線で見てしまったという事情があります。たぶん本作を絶賛している人は猿側(主にシーザー)に感情移入しまくって観ているんだと思うし、実際、制作側も意図的にそういう作りにしているのは分かるのですが(特に本作では人間サイドに人間的な人物は一人もおらず。シーザーに情けをかけられたプリーチャーとか、もう少し重要な役回りを演じるかと思いきや、ただの恩知らず野郎だったり。)、僕の場合、どうしても全面的にはシーザー目線に立てないというか、これは何でだか分かりませんが、今後の自分の内面と向き合うにあたっての宿題という感じです。

口のきけない少女が、猿に名前を与えられるシーンも、ほんわか良いシーンのごとく撮られていましたが、個人的には「猿に名付けられるとは、なんと不吉で恐ろしい!」と思って観ていましたよ。

もう一つ気に入らなかったのは「猿があまりに人間っぽすぎた」ことですね。猿の知能が発達したからといって、ただ人間的になるんじゃなくて、むしろ人間とは全然違ってもいいはずで、人間には理解できないような特殊性を備えていたりしても面白かったんじゃないかなー。SFの面白さってそういう所にあると個人的には思っているし、そういう作品の方が、より現代社会への批評になったりします。

でも、一部の猿が、人間側に寝返って「ドンキー」と呼ばれ、使いパシリをさせられてるのは物語に深みを出していて良かったし、その裏切ったはずのゴリラが最後にはシーザーを救うために命を投げ出すっていう男気炸裂のシーンにはグッときました。

あと、映像の美しさには感心したし(猿の毛につく雪の感じとか本当にリアルでした。)、海岸線を馬に跨って走る画はカッコよくて痺れました。白髪まじりになったシーザーが最期に死んでいくシーンは、生まれてからずっと見守ってきているだけに、子供の無垢だった頃を思い出しては目頭が熱くなりましたよ。シーザー神話3部作としては、十分に面白いシリーズ作品でした!

個人的には、少女ノヴァを演じたアミア・ミラーちゃんの今後に期待したいです。

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人種のメタファー

1968年の初代『猿の惑星』が人種差別をメタファーにしていたのは有名な話です。猿は黒人のメタファーとして描かれていたのです。対して、リブートされた「猿の惑星」三部作では、人種のメタファーはあえて排除し、シーザーの成長物語をメインに描かれました。今作「聖戦記」の強制労働のシーンは明らかに人類の負の歴史をなぞっていますが、今の時代に人種問題を語る”入れ物”として「猿の惑星」は相応しくないと思います。なので、今シリーズが「シーザー物語」になったのは、まあ仕方のないことだと思います。

もし新シリーズの猿をメタファーとして撮るとしたら、何のメタファーとして撮るべきだったか?これは、現代においては「AI(人工知能)」しかないと思います。

元々シーザーは、『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』で描かれているとおり、アルツハイマーの治療薬を猿に打ったことから生まれた天才猿です。つまり、科学の力で生まれた突然変種であり「人類vs科学の暴走」と捉えることができます。今作で大佐は「エイプを生んだのは人間だ。自然は、傲慢な人間を罰している」と言いましたが、猿インフルエンザを生み出したのは「科学」であって「自然」ではありません。

シリーズ第1作「創世記」を撮ったときに「人類vs科学の暴走」という図式はすでに出来上がっていたのです。ホーキング博士は「AIは人類にとって必ず脅威になる。AIの研究はただちに中止すべきだ」という警句を発していますし、そういうメタファーで撮ったらもっと現代的な話になったのかなーっと思いました。

「猿の惑星」シリーズ4作目は?

リブート版「猿の惑星」シリーズ、シーザー編はとりあえず今回までの三部作で終了ですが、シリーズ4作目の続編の企画もあるようです。おそらく、シーザーの息子、コーネリアスを主人公にした物語になりそうです。それで、ヒットすれば5作、6作と続いていく可能性が高いと思われます。

インタビュー記事では、監督はマット・リーヴスが続投しそうな雰囲気ですが、主演はアンディ・サーキス以外の俳優が演じることになるんだろうし、誰が抜擢されることになるのか、気になりますね。(そもそもパフォーマンス・キャプチャーだからアンディ・サーキスが引き続き主演でもそれほど問題はないのかもな)

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1 個のコメント

  • ツイッターから来ました!感想面白かったです(^-^)わたしはかっこいいシーザーが観れただけで満足だったのですが、たしかに人間の視点から見たら複雑だし、AIのメタファーとか取り入れたらもっと深みがあって同時代に撮られる価値のある作品になったと思います。また感想読みに来ます♪

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