バリー・シール アメリカをはめた男(2017米)ネタバレ感想

(C)Universal Pictures

トム・クルーズ主演の最新作、『バリー・シール/アメリカをはめた男』を新宿TOHOシネマズで観てきましたよ。公開初日の土曜日ということもあって満席でした。

監督はダグ・リーマン。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)以来の2度目のタッグです。大好きなトム・クルーズの主演作で、さらに大好物の「実録もの」ということで、大満足な出来でしたよ。

実在の人物がモデルということで、「すごい奴がいたものだ」と思うと同時に「アメリカの隠された歴史こえ~!」って思いました。

この記事では、あらすじや、感想をネタバレありで書いています。また、「イラン・コントラ疑惑」を巡るアメリカの闇にも触れています。

※ネタバレが嫌な人は「あらすじ」は飛ばしてくださいね!

映画データと予告編動画

2017年/アメリカ  上映時間:115分
原題:American Made
配給:東宝東和
監督:ダグ・リーマン
製作:ブライアン・グレイザー、ブライアン・オリヴァー、ダグ・デイヴィソン、キム・ロス、レイ・アンジェリク、タイラー・トンプソン
製作総指揮:マイケル・プランク、ジョニー・リン、ゲイリー・スピネッリ、エリック・グリーンフェルド、パリス・カシドコスタス・ラティス、テリー・ドゥーガス、ブラント・アンダーセン、マイケル・フィンリー、 マイケル・ベイシック、レイ・チェン、マルコス・テレシア、ジョシュア・スクラ
脚本:ゲイリー・スピネッリ
撮影監督:セザール・シャローン
美術:ダン・ヴェイル
衣装:ジェニー・ゲーリング
編集:アンドリュー・モンドシェイン
音楽:クリストフ・ベック

<キャスト>
トム・クルーズ:バリー・シール
モンティ・”シェイファー”:ドーナル・グリーソン
ルーシー・シール:サラ・ライト・オルセン
JB:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
ホルヘ・オチョア:アレハンドロ・エッダ
デイナ・シボタ:ジェイマ・メイズ
ジェームズ・ランジェル:ベニート・マルティネス
ダウニング保安官:ジェシー・プレモンス
ジュディ・ダウニング:ローラ・カーク
クレイグ・マッコール捜査官:E・ロジャー・ミッチェル

予告編

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『バリー・シール アメリカをはめた男』のパンフレット情報

37ページ 価格:720円(税込み)
コラム執筆者:真魚八重子(映画評論家)、森直人(映画ライター)

あらすじ(ネタバレあり)

1978年のアメリカでの出来事。史上最年少(16歳でパイロット試験に合格)で大手航空会社TWAにパイロットとして採用されたバリー・シール(トム・クルーズ)は、順風満帆な人生を歩んでいた。美人でエッチな妻ルーシー(サラ・ライト・オルセン)と幼い娘に囲まれ、幸せな家庭を築いていた。

お小遣い稼ぎにキューバから葉巻やマリファナの密輸をしていたバリーのもとにCIAの職員を名乗るシェイファー(ドーナル・グリーソン)が現れる。密輸がばれたことに、ドキッとするバリーだったが、天才的な飛行機の操縦技術を見込まれた上でのCIAの極秘任務へのスカウトだった。

シェイファーから最新の小型飛行機をプレゼントされたバリーは、グアテマラやエルサルバドルでの偵察写真を撮影するという危険な極秘任務を次々とやり遂げていく。バリーの撮った写真はCIAでも高く評価される。

そんな危険な任務の中、コロンビアで知り合った麻薬カルテルのドン・エスコバルからカインのアメリカへの密輸ビジネスを請け負うことになる。はじめは断ろうとしたバリーだったが、高額の報酬につられ、CAIと麻薬カルテルの仕事を掛けもちで行うことになる。

コロンビアの地元警察に麻薬密売の容疑で収監されるが、シェイファーが裏から手を回すことで釈放される。しかし、DEA(麻薬取締局)の捜査を逃れるため、ルイジアナ州の自宅には居られなくなり、家族でアーカンソン州のミーナという田舎の町に引っ越すことになる。突然の引っ越しに発狂する妻ルーシーをなんとか説得し、バリーの新しい地での生活がはじまる。

ミーナの広大な飛行場をシェイファーからプレゼントされると同時に、CIAからの新たな極秘任務として、ニカラグアへの武器輸送を命ぜられる。それは、ニカラグアの反共ゲリラ「コントラ」を支援するためだった。これが1986年の「イラン・コントラ疑惑」へとつながっていく。

CIAのシェイファーは、ニカラグアから兵士を呼び寄せ、バリーの飛行場で軍事訓練までさせることを計画。バリーは兵士の輸送もしなければならなくなる。しかし、彼ら「コントラ」にやる気はなく、アメリカの土を踏んだ興奮で脱走者が続出する始末であった。

バリーは、CIAと麻薬カルテルの仕事を一人ではさばききれなくなり、4人のパイロットをやとってビジネスを拡大させていく。稼ぎまくったバリーは大富豪になり、この世の栄華を極める。稼いだ金額は50億ドルと言われており、お金の置き場所に困るほどだった。

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そんな中、妻ルーシーの弟のJB(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)が転がり込んでくるが、バリーのお金を盗んで新車を買ったり、未成年の女の子を連れ込んだりと、どうしようもない問題児であった。

引き返せなくなったバリーは、社員を使って密輸をガンガンこなし、飛行機で追いかけられても、持ち前の飛行技術で逃げ切ってみせた。しかし、あまりに派手なバリーのやり方により、FBI(連邦捜査局)、DEA(麻薬取締局)、ATF(アルコール・タバコ・火器および爆発物取締局)に方々から目を付けられる存在になっていく。

そこへ、問題児のJBが大金を所持していたことが見つかり、地元警察に逮捕されてしまう。バリーは裏ルートを使ってJBを釈放してやり、外国へ逃がすことにするが、麻薬カルテルの仕掛けた爆弾によりJBの乗った車は大爆発。バリーの目の前でJBは爆死する。

シェイファーはCIAから計画が上手くいっていないことを詰められ、関係書類をすべて焼き払い、バリーを切り捨てようとする。また、JBの死により組織の力に恐怖したバリーは、行方をくらまそうとするが、FBI、DEA、ATFに捕まってしまう。

それでも、バリーはCIAが助けてくれると思っていた。実際、ほどなくバリーは釈放されることになる。しかし、バリーを助け出したのは、CIAではなく、なんとホワイトハウスだった!

ホワイトハウスは、バリーの罪を免罪する代わりに麻薬カルテルの関与者の証拠写真を撮ってくるように命ずる。バリーに残された道はホワイトハウスの条件を飲むことだけだった。最後の最も危険なミッション。輸送機に仕込んだ隠しカメラで麻薬密売にかかわった者たちの写真を撮ってくる任務をバリーは見事にやり遂げる。

家族とテレビのニュースを見ていたバリーはビックリすることになる。なんと、バリーが隠しカメラで撮ってきた写真がテレビで流されていたのだ。そして、そこにはバリーの姿もバッチリと写っていた。それは、つまりアメリカ政府がバリーを切り捨てた瞬間であった。バリーは見事にハメられたのだった。

バリーに裏切られたことを知った麻薬カルテルヒットマンを飛ばし、バリーを始末しようとする。家族の安全のため、一人になったバリーは、毎日違ったモーテルを転々としながら、これまでの事件の記録をビデオレターの形で残すことにする。

そして、ある日、車を降りようとしたバリーは、麻薬カルテルから送られたヒットマンに射殺される。

最後に、あんなに嫌がっていたファストフードで働く、妻ルーシーと、アメリカの議会で「イラン・コントラ疑惑」が追及される予兆を残して映画は幕を閉じます。

点数と評価

85点
・トム・クルーズがその魅力を存分に発揮!作品との相性もバッチリ!
・実在した人物の実録ものとしても一級品!
・家族愛にあふれた奥さんとのエピソードも泣ける!

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感想

前回観たトム・クルーズ主演作の『マミー/呪われた砂漠の王女』がやや期待外れな出来だったので、今回もちょっと不安だったんですが、いらん心配で、かなり面白かったです。トム様、最高でした!

ダグ・リーマン監督との前作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』も大好きな作品なんですが、トム・クルーズとダグ・リーマンの相性はバッチリですね。「ミッション・インポッシブル」シリーズが完全無欠のトム・クルーズを映し出すのに対して、ダグ・リーマンとの作品は、ちょっと情けなかったりドジだったりするトム・クルーズが観れるのがいいです。

観終わってみれば、トム・クルーズ以外の俳優がこの役をやるのは、ちょっと考えられないくらいにハマっていたと思います。トム・クルーズの新たな代表作になる作品だと思いました。トム・クルーズは55歳なのに、あまりに若作りした役は「ちょっとキツいなー」と観ていて思うこともありましたが、総じて見れば、最高でした。本作のような胡散臭い役を演じさせたらナンバーワンです!

実際、トム・クルーズの中でも、かなり上位に入るくらい好きな作品になりました。

次から次へととんでもなくデカいスケールの話になっていって、感覚がマヒします。冷静に見れば、重大犯罪に手を染めている大悪党なんですが、テンポのいいストーリーと、トム様の屈託のない笑顔も手伝って、「イイ奴」にしか見えないです。まんまと騙されます。

お金が余りすぎてお金の置き場所に困って、庭に埋めたり、馬小屋に隠したり、架空会社を作って田舎町のおじいちゃんを飾り社長にしたり、ぶっ飛んでて楽しいです。実際、この田舎町ミーナは、バリーが運んできた金で潤い、片田舎なのに何故か「金のある街」として金融管理局からも目をつけられていくんです。

個人的に一番グッときたのは、エッチな妻ルーシーとのやり取りです。ぶちキレながらも夫を信頼して付いてくる姿が泣けるし、家族思いのバリーが、死を覚悟した逃避行へ向かうために家族を遠ざける場面は胸に迫るものがありましたよ。

ほかにも、トムがコロンビアから飛行機で離陸できるかお金を掛けてる麻薬カルテルがめちゃ楽しそう!とか、コロンビア警察に踏み込まれた麻薬カルテルが、一緒にいたバリーに「大丈夫だからここにいろ」とか言って逃げ出すシーンの置き去りにされたトム様の慌て方は最高だった!とか、クライマックスの麻薬カルテルとのやり取りで恐怖のあまりチビっちゃう連れのヒゲ面の表情が緊迫感あって良かった!とか、ホントいい映画でしたよ。

久しぶりに大満足なトム・クルーズ映画でした!おすすめです。

トム・クルーズの付け尻疑惑

覚えている人も多いと思いますが、映画の公開から1月ほど前に、映画『ワルキューレ』(2008年)でトム・クルーズが付け尻をつけていたんじゃないか?という疑惑が浮上し、トム様、本人がこれを完全否定するという意味不明でお茶目すぎるニュースが流れました。

『バリー・シール』では、トム様がお尻をペロンッと出すシーンが出てきます。しかも2回も!

このシーンを観たとき、あの不可解なニュースは「前振り」だったのか!と思いました。プリっとしたいいお尻でした。町山さんも「55歳のお尻が商品価値を持つのがすごい!」って言ってましたっけ。笑

ゲイリー・ウェッブの不可解な死と『キル・ザ・メッセンジャー』

『バリー・シール』はコメディとして作られてるので、エンターテイメントとしてめちゃくちゃ面白く観れるんですが、実はとても恐ろしい話です。監督は、この映画を「実話に基づいた楽しい嘘」って表現していますが、実際はとんでもない・・。

「イラン・コントラ疑惑」について調査し、CIAの麻薬密売への関与を突き止めたゲイリー・ウェッブというジャーナリストがいるんですが、謎の死を遂げているんです。驚くことに「顔に2発の銃弾を浴びて自殺」したと発表されています。どうやって顔に「2発」の銃を撃てるんでしょうか?これ、2004年の話なので、まだ10数年しか経ってない頃の出来事ですよ。

ちなみに、このゲイリー・ウェッブ氏を主人公にした映画も存在しています。『Kill the Messenger(キル・ザ・メッセンジャー)』(2014年)という映画で、マイケル・クエスタ監督、ホークアイ役で有名なジェレミー・レナーがゲイリー・ウェッブの役を演じています。日本では未公開でソフト化もされていません。でも、こういう映画もちゃんと存在するっていうのが、アメリカの凄い所ですね。

CIAは『バリー・シール』で扱われている極秘任務があったことを完全に否定しているので、「こんな映画をメジャーで撮っちゃって大丈夫なの?」って思っちゃいます。

『バリー・シール』の原題「American Made」=「アメリカ製」っていう意味ですから、「これがアメリカや!」っていうことですよね、きっと。

告発色を弱めるために、あえてコメディ映画にしたのかな?とも思っちゃうし、邦題の副題である「アメリカをはめた男」っていうのも、これ本当は、「アメリカにはめられた男ですよね?そのあたりに日本の配給側の配慮を感じます。正しくは「はめたつもりが、はめられた男」かな。

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『バリー・シール』に似た映画

実在したアンチ・ヒーローの実録ものということで、スティーブン・スピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)やマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)を彷彿とさせました。

前者は、実在した詐欺師・フランク・アヴィグネイルをモデルとした映画で、この映画、僕の人生ベスト10には間違いなく入るくらい好きな作品です。原作になったアヴィグネイルの自伝も面白かったです。偽札を大量に刷った詐欺師ですが、ある時はパイロット(ただしバリー・シールと違って操縦はできない)、ある時は医者、弁護士、大学講師と色々な職業になりすますした天才詐欺師です。出所後はその卓越したスキルを買われてFBIに協力するようになります。

後者は、株のブローカーとして荒稼ぎし、証券詐欺で逮捕されたジョーダン・ベルフォードの実録ものです。ディカプリオの演技がクレイジーに弾けまくってて最高です。『バリー・シール』は雰囲気的にはこっちの映画に似ていますね。

どちらもレオナルド・ディカプリオの主演ですが、両方ともレオ様のキャリアの中でもベスト級の演技だと思います。

バリー・シールを主人公にした他の映画もあるらしい

こんな人物が実際に居たなんて全然知りませんでしたが、バリー・シールを主人公にした映画は過去にも撮られています。

デニス・ホッパーがバリー役を演じたロジャー・ヤング監督の『裏切りの代償』(1991年)という作品なんですが、DVD版未発売で、VHSでしか観れない作品です。

引用元:Amazon.co.jp

めちゃくちゃ観てみたいんですけど、ビデオデッキ持ってないんですよね(涙)
Amazonで1円で買えるんだけど・・・。買ってみようかな・・・。ビデオデッキないけど。(※その後、購入してDVDに焼いてもらって観ました!また感想書きます。

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